手ぶれ補正なし。RAWも撮れない。動作もゆっくり。
スペックだけを並べれば、たしかに物足りないカメラです。
カメラ好きから厳しい評価を受けたのも、無理はありません。
2025年の発表と同時に世間を賑わせた、富士フイルムのX half。
スペックよりも「撮影を楽しむこと」に全振りしたカメラです。
それでも気になってしまう。そんな方も多いのではないでしょうか。
私は、撮影そのものを楽しみたくて購入しました。
今まで140台以上のカメラを使ってきましたが、このカメラは少し特別。
実際に買って使ってみた良い点・気になる点を、作例を交えて正直にレビューします。
- 240gの小型軽量ボディ。カバンに入れても苦にならない
- 情報表示が一切ない素通しの光学ファインダー。構図とタイミングだけに集中できる
- 撮り終わるまで写真が見られないフイルムカメラモード。現像までのワクワクが味わえる
- スワイプ一つで変えられるフイルムシミュレーション。色を選ぶこと自体が楽しい
- 手ぶれ補正なし、RAW非対応、動作もゆっくり。快適さを捨てて、楽しさに振り切った一台
- スマホでもミラーレスでもない、撮ること自体が楽しいカメラが欲しい貴方
- フイルムカメラに憧れはあるものの、ランニングコストで踏み出せない貴方
スペック比較
レビューに入る前に、X halfのスペックをサラッと頭に入れておきましょう。
比較対象として候補に挙げやすい、2台との比較表を作成しました。
| X half | GR IV | X100VI | |
|---|---|---|---|
| メーカー | 富士フイルム | リコー | 富士フイルム |
| センサーサイズ | 1インチ | APS-C | APS-C |
| 有効画素数 | 約1774万画素 | 約2574万画素 | 約4020万画素 |
| レンズ 35mm換算 | 32mm F2.8 | 28mm F2.8 | 35mm F2.0 |
| ファインダー | あり(光学式) | — | あり(光学/電子) |
| 内蔵フラッシュ | あり(LED) | — | あり |
| 手ぶれ補正 | — | あり | あり |
| 液晶 | 2.4型 約92万ドット 固定 | 3.0型 約103.7万ドット 固定 | 3.0型 約162万ドット 可動液晶(チルト式) |
| タッチパネル | あり | あり | あり |
| スマホ連携 | あり | あり | あり |
| USB充電 | USB-C | USB-C | USB-C |
| 低速限界設定 | — | あり | あり |
| RAW記録 | — | 対応 | 対応 |
| 質量(バッテリーSD含む) | 約240g | 約262g | 約521g |
| サイズ | 約105.8×64.3×45.8mm | 約109.4×61.1×32.7mm | 約128.0×74.8×55.3mm |
| 価格 | 約8万円 | 約20万円 | 約26万円 |
スペックだけを見れば、X halfが一歩譲ります。
画質を求める場合は、GR IVかX100VIを選ぶのが無難な選択。
とはいえ、GR IVもX100VIも高価な上に入手困難です。
X halfの魅力は、やはりスペックに表れない部分。
その魅力を紐解いていきます。
作例
X halfで撮影した作例を紹介します。

弧を描くガラス張りの建物を、内側から撮影。
明暗差の大きい、なかなか意地悪なシーン。
それでも等間隔に並ぶガラスの質感は、しっかりと描き出されています。
背景は白飛びしていますが、嫌味な感じはありません。
これがフイルムシミュレーション「REALA ACE」の力なのでしょうか。

こちらも同じくガラス張りの建物。
目を引くのは、わずかにシアンを帯びた色味です。
無機質な人工物が、ひんやりとしたスタイリッシュな雰囲気に。
「REALA ACE」は、こうした人工物との相性がいい印象です。


X halfは、黒の階調表現が得意。
建物のシャドー部にもしっかりと情報が残っており、懐の深い描写です。
平面的になりがちな壁面ですが、立体感を感じる仕上がり。
デザインだけではない。
写りの方でもしっかりと魅せてくれます。

ここでもシャドーのグラデーションは、やはり豊か。
一方でハイライトは、あまり粘ってくれません。
とはいえ、写真全体として見れば悪くはない。
むしろ、暗部のグラデーションを大事にすることで、奥行きを感じる描写に仕上がっています。

特徴的な空に出会い、思わずシャッターを切った一枚。
露出(明るさ)を空に合わせたため、地上部は黒く潰れています。
しかし、これがかえって空へ視線を集めてくれる。
狙ったわけではありませんが、ドラマチックな一枚になりました。

日常で撮るのは、風景だけではありません。
目の前の食べ物にもカメラを向けたくなるもの。
クレープアイスの、柔らかな皮の質感表現がお見事。
実に美味しそうに感じます。

日常でよく見かける光景も、フイルムシミュレーションを変えれば印象がガラリと変わります。
被写体は、枯れたアナベル。
「ノスタルジックネガ」で撮ると、なんとも懐かしく、優しい描写に。
実際の色味とは異なりますが、これはこれで味がある。
見たままに残すのではなく、どう残したいかで選べる。
そこがフイルムシミュレーションの面白さです。


ノスタルジックネガは、何気ない被写体をエモい描写に変えてしまいます。
いつも見ている景色が、どこか懐かしい一枚に。
難しい設定も、あとからの調整も必要ありません。
ただ撮るだけで作品になってしまうのですから、大したものです。


X halfで撮影した写真を見返すと、どこか深みのある一枚が多い。
ミラーレスカメラほど高画質ではありません。
それでも、なぜか心に残る描写。
ミラーレスともスマホとも違う、少し不思議な写真が撮れます。
これこそが、X halfならではの味なのかもしれません。
よかった点

X halfのよかった点を紹介します。
①フイルムカメラを思わせるクラシカルなデザイン

X halfの特徴といえば、フイルムカメラを思わせるクラシカルなデザイン。
ボディ前面に機種名やメーカー名は一切なく、非常にシンプルです。
ではどこに表示されているのかというと、ボディの上面。
この配置は、M型ライカのPタイプを彷彿とさせます。

ボディ材質は樹脂製とのことですが、意外にもチープさは感じません。
各部はしっかりと作り込まれていて、精巧な印象を受けます。
ネットや動画のレビューでは、質感が低いという意見も散見されます。
しかし、実際に手にした感触は、思いのほか好印象。
いい意味で期待を裏切ってくれました。
②小型軽量ボディ|240g
X halfの質量は240g(バッテリー・SDカード含む)。
非常に軽量コンパクトにまとまっています。

上の写真は、ミラーレスカメラのニコンZfと並べたもの。
どちらもクラシカルなデザインですが、サイズ感が全く違いますよね。
写りはミラーレスカメラに及びません。
それでも日常的に持ち歩きたくなるのは、X halfのサイズ感です。
軽くて小さいことは、カメラにとってとても重要です。
どんなにいいカメラでも、大きく重くては持ち出す頻度が減ってしまいます。
いつでも持ち歩けて、撮影そのものも楽しい。
常に持ち歩きたいサイズ感だからこそ、より多くのシャッターチャンスに巡り会えるのです。
③撮影が楽しくなる光学ファインダーを搭載

X halfは小さいながらも、光学ファインダーを搭載しています。
といっても、素通しのファインダー。
ファインダー内の情報表示は一切ありません。
ただ覗いて撮ることしかできませんが、これが本当に楽しいのです。
情報がない分、構図とタイミングだけに集中できる。
露出はおろか、パララックス(視差)もあるので撮れる範囲すらあいまい。
だからこそ、どんな写真が撮れたのか楽しみになります。
スマホやミラーレスでは、撮れる写真がモニターに表示されています。
どんな写真が撮れたかというワクワク感は、どうしても薄い。
何も表示されない素通しのファインダーだからこそ、撮影が楽しくなるのです。
④撮影すると縦写真になるギミックが新鮮

X halfでは、通常の向きで構えると縦写真が撮れます。
フイルムのハーフサイズカメラに着想を得たものですが、これが新鮮で結構楽しいのです。
カメラで写真を撮っていると、どうしても横位置の写真ばかりになります。
縦位置で撮るには、カメラを持ち替えるという一手間が必要ですから。

ところがX halfでは、構えれば自然と縦写真。
普段撮らない構図が、当たり前のように増えていきます。
見慣れたはずの被写体も、縦にするだけで違って見える。
これが思いのほか新鮮で、新たな発見に繋がります。
⑤フイルムカメラを疑似体験できるフイルムカメラモード


X halfの売りの一つが、フイルムカメラモード。
設定した枚数を撮り終わるまで、撮れた写真を確認できないという機能です。
写真を見るためには、スマートフォンと接続して現像を行わなければなりません。
これはもう、フイルムカメラの体験そのもの。
一枚一枚を大切に撮るようになりますし、撮り終えてからの現像も待ち遠しい。
デジタルカメラでありながら、フイルムカメラの体験ができるのです。

本物のフイルムに手を出すのは簡単ではありません。
フイルムは近年価格が高騰。
フイルム代も現像費用もかさみます。
初期費用こそ低いものの、ランニングコストはうなぎ登り。
それに対しX halfは、初期費用こそかかるものの、ランニングコストは無視できるほど少ないです。
フイルム代を気にせず、撮影体験だけを味わえる。
富士フイルムだからこそ、作ることができた唯一無二のカメラだと感心しました。
⑥撮影が楽しくなるフイルムシミュレーション搭載


富士フイルムのカメラといえば、フイルムの色味を再現したフイルムシミュレーションが有名です。
X halfにも、このフイルムシミュレーションがしっかりと継承されています。
同じ被写体でも、選ぶフイルムシミュレーションによって全く異なる雰囲気に。
撮る前に「今日はどの色で残そうか」と考える時間が、また楽しいのです。

変更方法にも工夫がされています。
左側のタッチパネルをスワイプするだけで、フイルムシミュレーションの切り替えが可能。
気軽に変更できるので、いつも以上に色を変えながら撮っていました。
ワンアクションで変更できるのは、X-E5、X-T50、X-T30III、そしてX halfのみ(記事執筆時点)。
フイルムシミュレーションを気軽に楽しんで欲しいという、開発陣の意図を感じます。
⑦バッテリー持ちが抜群
X halfは小さなサイズにもかかわらず、他の富士フイルムのミラーレスと同じバッテリーを採用しています。
そのおかげで、バッテリー持ちが非常によいのです。
公称値は880枚。
コンパクトデジタルカメラとしては、驚異的な数字です。
一日中持ち歩いて撮っていても、残量を気にすることはほとんどありませんでした。
予備バッテリーは不要とも思えるほどの持ちのよさ。
充電もUSB-Cで可能です。
出先で残量が心細くなっても、モバイルバッテリーがあれば安心。
専用の充電器を持ち歩く必要がないのも嬉しいポイントです。
気になる点

X halfの気になる点を紹介します。
①手ぶれ補正がない
X halfには、手ぶれ補正が搭載されていません。
最新のカメラとしては、なかなか硬派な仕様です。
手ぶれ補正を頼りに暗所で撮る、というわけにはいきません。
シャッタースピードとISO感度の設定で、ブレを防ぎましょう。
とはいえ、設定を難しく考える必要はありません。
基本的にはISOオート(上限3200)で大丈夫。
カメラが手ぶれを抑えつつ、ノイズの少ないISOを自動で設定してくれます。
(1/125秒より遅くならないようにプログラムされているようです)
②全体的な動作がゆっくり
X halfを使っていて感じるのは、全体的な動作がゆっくりだということ。
レスポンスしかり、オートフォーカスしかり。
最新のカメラを使っているというよりは、少し前のカメラを使っている感覚に近い。
しかし、カメラのコンセプトを考えれば納得もできます。
決定的瞬間を狙ったり、スポーツを撮ったりするカメラではありません。
日常や旅行の思い出を、楽しみながら残していく。
そういうカメラだと分かっていれば、動作がゆっくりな点も不思議と許せてしまいます。
とはいえ、遅いことに変わりはありません。
シャッターチャンスを確実にものにしたい方は、別のカメラを選ぶのが吉です。
③RAW撮影ができない
X halfは、カメラ好き御用達のRAW形式に対応していません。
そもそも、RAWで撮影する層をターゲットにしていないカメラです。
むしろ、RAWで撮れないからこそ、撮影時の設定をしっかりと考えるようになります。
特にフイルムシミュレーションやホワイトバランス、露出などはJPEGオンリーだと後からの補正は厳しい。
だからこそ、撮影時に設定を煮詰める楽しさがあります。
普段はRAW+JPEGで撮影している私も「X halfのJPEGオンリーは大丈夫かな?」と思っていました。
ところが実際に使ってみると、JPEGだけでもかなり楽しめる。
普段からJPEGで撮る方はもちろん、RAWで撮る方にも撮影の楽しさを再確認させてくれる一台です。
外観

X halfの外観を見ていきましょう。
①カメラ前面

カメラ前面は、至ってシンプル。
普通のカメラには必ずあるメーカーロゴと機種名が、どこにも見当たりません。
向かって右側には、光学ファインダー。
その隣に、LEDフラッシュが備わります。
余計なものを削ぎ落としたルックスは、まるでフイルムカメラ。
このシンプルさこそ、X halfのデザインの魅力だと感じます。
②カメラ背面

カメラ背面も、至ってシンプル。
左上には、光学ファインダーが配置されています。
目を引くのが、縦型の液晶ディスプレイ。
縦写真が基本のX halfならではの、一風変わった配置です。
そして左下には、小さなサブパネル。
ここをスワイプするだけで、フイルムシミュレーションを切り替えられます。
③カメラ上面(軍幹部)

カメラ上面(軍幹部)には、メーカーロゴと機種名が描かれています。
主張しすぎない控えめな刻印が、ミニマルな印象です。
右側には、露出補正ダイヤル(明るさを調整するダイヤル)。
レンズまわりには、絞りを操作するリングが備わっています。
どちらも指先ひとつでダイレクトに操作できるので、撮影のテンポが途切れません。
④カメラ側面

カメラ側面には、USB-C端子を配置。
専用の充電器がなくても、モバイルバッテリーがあれば充電できます。
旅先で荷物を増やさずに済むのは、ありがたいところ。
その上に見えるのが、LEDフラッシュの切替ボタン。
物理ボタンで切り替えられるので、意図せずに発光してしまうこともありません。
一緒に買うと便利なアイテム
X halfと一緒に揃えておきたいアイテムを紹介します。
必要度も添えておきますので、参考にしてください。
- SDカード(必須)
- 液晶保護フィルム(ほぼ必須)
- 金属製レンズキャップ(見た目を楽しみたい方)
①SDカード
X halfには、SDカードが付属していません。
カードがなければ一枚も撮れませんので、本体と一緒に必ず用意しておきましょう。
選ぶ際は、64GB程度のものがあれば十分です。
X halfはRAW記録に対応していないため、大容量のカードは必要ありません。
ただし、動画も撮るのであれば128GB以上を選んでおくと安心です。
おすすめのSDカードを紹介しておきます。
現在AI需要により、記録メディアの高騰が続いています。
SDカードもその煽りを受け、価格が上昇中です。
とはいえ、記録メディア無くして写真は撮れません。
信頼性が高く、性能的にも十分なSDカードを選定しましたので、参考にしてみてください。
(容量は写真を撮るだけであれば64GBでも十分ですが、品切れのためできるだけコスパの良い製品を選定しています)
| Nextorage | Nextorage | KIOXIA | SanDisk | |
|---|---|---|---|---|
| 連写をする人はコレ | 低価格大容量 | 迷ったらコレ | 迷ったらコレ(次点) | |
| 信頼性 | 日本メーカー (旧ソニー系列) | 日本メーカー (旧ソニー系列) | 日本メーカー (旧東芝メモリー) | SDカードの老舗 |
| SDカードタイプ | UHS-I | UHS-I | UHS-I | UHS-I |
| 商品名 | NRS-Hシリーズ | NX-F2CL | EXCERIA PLUS | Extreme PRO |
| 最大速度 | 読込:97MB/s 書込:91MB/s | 読込:100MB/s 書込:非公表 最低書込:30MB/s | 読込:100MB/s 書込:60MB/s | 読込:200MB/s 書込:90MB/s |
| 容量 | 256GB | 256GB | 128GB | 64GB |
| 価格 | 8,790円 | 8,030円 | 4,780円 | 5,333円 |
迷った方は、コストパフォーマンスに優れるKIOXIA(旧東芝メモリー)のSDカードを選択しましょう。
②液晶保護フィルム
カメラを購入したのなら、必ず手に入れておきたいのが液晶保護フィルム。
画面が傷ついてテンションが下がる前に、貼っておきましょう。
私は、ハクバ製の液晶保護フィルムを使用しています。
日本メーカーなので安心です。
③金属製レンズキャップ
X halfにはレンズキャップが付属していますが、ゴム素材のため高級感はありません。
せっかくのクラシカルなルックスですから、ドレスアップにもこだわりたいもの。
そんな方におすすめなのが、こちらの金属製レンズキャップ。
ひんやりとした金属の質感が、X halfのデザインによく似合います。
まとめ

X halfを、作例を交えてレビューしてきました。
最後に、特徴をまとめておきたいと思います。
毎日持ち歩きたくなる、クラシカルな外観をあしらった小型軽量ボディ。
それでいて、撮影が楽しくなるギミックが満載です。
標準で縦撮影に、素通しの光学ファインダー。
よりストイックに楽しみたい方には、現像するまで中身が確認できないフイルムカメラモードも用意されています。
たしかに、スペックだけを並べれば物足りないカメラかもしれません。
手ぶれ補正もなく、RAWも撮れず、動作もゆっくり。
それでも私は、このカメラを買ってよかったと思っています。
撮影そのものを、最高に楽しみたい。
そんな貴方に、心からおすすめできるカメラです。
