キヤノンのPowerShot G1X mark3。
皆さんは、ご存じでしょうか。
G1X mark3は、大型センサーとズームレンズを組み合せが光る、キヤノンのフラッグシップ(最上位)のコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)。
リコーのGRシリーズや富士フイルムのX100シリーズの影に隠れて、知名度は低めです。
私は、G1X mark3 を発売後すぐに購入し、一度手放しました。
しかし、2023年に再購入。
理由は、GRIIIやX100Vを使うことで、G1X mark3の魅力に気づいたから。
- ズームレンズとAPS-Cセンサーの組合せでありながら、400g以下
- ファインダー、バリアングル、タッチパネル搭載で様々なシチュエーションに対応可能
- 防塵防滴(水滴・埃に強い)に対応
コレに魅力を感じたら、あなたにはG1X mark3 がオススメかもしれません。
それでは、G1X mark3をレビューしていきたいと思います。
なお、G1X mark3 は既にディスコン(生産終了)のため、購入する場合は中古カメラをご検討ください。
G1X mark3とは
G1X mark3とは、2017年にキヤノンから発売された大型センサー搭載のコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)。
APS-Cセンサーとズームレンズの両立を図りながらも、質量399g(バッテリーSD含む)に抑えた意欲作です。
電子ビューファインダーをボディ中央に備え、防塵防滴に対応するなど、フラッグシップに恥じないカメラとなっています。
APS-Cセンサー搭載のコンデジは、リコーのGRや富士フイルムのX100シリーズなど各社から発売されていましたが、単焦点レンズ(ズーム不可)のものばかり。
そこに、キヤノンはズームレンズを引っ提げて登場しました。
ズームレンズのAPS-CカメラはライカのX Vario Typ107がありましたが、質量628g、手ぶれ補正なし、価格は30万円越えと個性的なカメラでした。
G1X mark3 の作例
G1X mark3 の作例を見ていきましょう。
コバルトブルーに染まる湖を撮影。
撮影時はあいにくの曇り空でしたが、湖の青がしっかりと表現されています。
左右の木々もシャープすぎることなく、繊細な描写。
大型センサーならではの余裕を感じます。
ラーメンの器、中央に配置された肉の質感。いかがでしょう。
非常に繊細な表現ではないでしょうか。
質感表現もさることながら、立体感も感じられる描写です。
露出をバラに合わせて撮影。
明暗差が大きく、カメラには厳しい状況ですが、きちんと写真として成立しています。
バラの葉の間から見える空も、白飛びする事なくしっかりと表現。
流石と言わざるを得ません。
1インチセンサーのRX100シリーズも優秀なカメラですが、G1X mark3は更に上を行きます。
ブーケの繊細な質感。伝わりますでしょうか。
G1X mark3は、柔らかな表現が得意なようです。
明暗差が大きな場面。
シャドー、ハイライトの情報量が、しっかりと残っている事に驚かされます。
オートフォーカス性能なら、ソニーと言われますが、子供が自転車をこぐ速度くらいなら、G1X mark3でも追従可能です。
GRIIIでは難しいシチュエーションですが、G1X mark3なら安心して任せられます。
背景のボケ味はいかがでしょう。
非常に滑らかなボケで、好感が持てます。
ズームレンズが故に、大きなボケは期待できませんが、ボケの質に関してはエレガントです。
G1X mark3のスペック
G1X mark3のスペックを見ていきましょう。
スペック|G1X mark3 と GRIII の比較
G1X mark3のスペックを紹介。
APS-Cサイズのセンサーを持つコンデジとして、リコーのGRIIIと比較しています。
G1X mark3 | GRIII | |
---|---|---|
メーカー | キヤノン | リコー |
センサーサイズ | APS-C キヤノンサイズ | APS-C |
有効画素数 | 約2420万画素 | 約2424万画素 |
レンズ 35mm換算 | 24-72mm F2.8-5.6 | 28mm F2.8 |
ズーム | 3倍 | |
ファインダー | あり | なし |
内蔵フラッシュ | あり | なし |
手ぶれ補正 | あり | あり |
自撮り | バリアングル | |
タッチパネル | あり | あり |
スマホ連携 | あり | あり |
USB充電 | microUSB | USB-C |
低速限界設定 | なし | あり |
RAW記録 | 対応 | 対応 |
防塵防滴 | 対応 | |
質量 (バッテリーSD含む) | 約399g | 約257g |
サイズ | 約115×78×51mm | 約109×62×33mm |
価格 | 中古で約10万円 ※販売終了 | 約12.0万円 ※受注一時停止 |
コンセプトが異なる両者。
G1X mark3は、ズームレンズ、ファインダー、内蔵フラッシュ、バリアングルなどカメラとしての基本機能が非常に高い。
対して、GRIIIは様々なものを捨て去り、コンパクトさと画質に全振りしています。
G1X mark3は、優等生タイプ
GRIIIは、一芸に秀でるタイプ
開放F値の変化
G1X mark3 は24-72mm、F2.8-5.6のズームレンズを搭載しています。
それぞれの焦点距離ごとの開放F値が、気になる人もいますよね。
代表的な焦点距離における開放F値は以下のとおり。
- 24mm F2.8
- 28mm F3.2
- 35mm F4.0
- 50mm F5.0
- 70mm F5.6
35mmまでは、F4以下を確保。
35mm以降は暗く(F値が大きく)なりますが、描写は絞り開放から安定しています。
G1X mark3の外観
G1X mark3の外観を見ていきましょう。
正面
ボディ全面にダイヤルを搭載(写真左側)。
直線を基調としたグリップが、全体のデザインを損なう事なくマッチしています。
小さいながらも、堂々とした佇まいです。
電源をONにした状態。
レンズも長すぎることはなく、バランスは良好です。
レンズ根本のリングは、機能を割り当てる事ができ、ステップズームや絞り等をダイレクトに操作可能。
背面
ダイヤルと十字キーが一体となった、ロータリーマルチセレクターを搭載。
ダイヤルとしても使えるので、非常に便利です。
電子ビューファインダー(EVF)を搭載しているので、炎天下でも被写体をしっかりと見る事ができます。
バリアングル液晶を搭載。
自撮りにもしっかりと対応できます。
上面(軍幹部)
上面(軍幹部)には、モードダイヤル(左)と露出補正ダイヤル(右)を搭載。
露出補正をダイレクトに行えるのは、嬉しいポイントです。
中央にはマルチアクセサリーシュー(ホットシュー)を搭載。
そのため、外部フラッシュを使用可能。通常のコンデジにはないメリットです。
もちろん、内蔵フラッシュもありますので、ご安心を。
G1X mark3の良かった点(メリット)
G1X mark3 を使っていて、良かった点(メリット)について解説していきます。
- APS-C搭載で余裕のある画質
- ズームレンズが便利
- 防塵防滴
- 抜群の操作性
- 電子ビューファインダー搭載
- 全部載せの安心感
APS-C搭載で余裕のある画質
G1X mark3は、APS-Cセンサーを搭載しています。
高画質なコンデジとして知られる、ソニーRX100シリーズの約3倍のセンサー面積。
大型センサーならではの余裕のある写真表現が楽しめます。
- 明暗差に強い(ダイナミックレンジが広い)
- 高感度に強い(暗所でも綺麗に撮れる)
- 繊細な描写
シャープな画質というよりも、線の細い繊細な写り。
柔らかな表現が得意なので、風景やポートレートにもオススメです。
ただし、レンズが暗いため、ボケ写真は期待できません。
ズームレンズが便利
G1X mark3 は24-70mmの3倍のズームレンズを搭載。
やはり、ズームは便利ですね。
大型センサーを搭載したコンデジは複数発売されていますが、ズームレンズ搭載機は稀。
私が知る限り、APS-Cセンサーかつズームレンズのコンデジは、ライカ X Vario Typ107のみ。
ライカ X Vario Typ107は、30万円超え、手ぶれ補正なし、重さ628gと非常に硬派なカメラでした(写りの評判は良い)。
それに比べて、G1X mark3は一般庶民にも扱いやすいスペックと価格。
単焦点レンズのGRIIIやX100シリーズに、描写は一歩譲るものの、G1X mark3の描写も上々。
ズームレンズは確実に表現の幅を広げてくれます。
防塵防滴
G1X mark3は、防塵防滴に対応。
小雨や雪の中でも、安心して使っていけます。
防塵防滴、ズームレンズ、大型センサーのコンデジは世界にただ一つ。
G1X mark3だけです。
雪の降る中、傘もささずに使用しました。もちろん、故障なしです!
防水ではないので、油断は禁物ですよ。
抜群の操作性
G1X mark3は、4つのダイヤル(コントロールリングを含む)を搭載。
各ダイヤルには、機能を割り当てる事ができます。
好きな機能にダイレクトにアクセスできる。
これほど操作性のいいコンデジは、中々ありません。
設定を色々煮詰めて撮りたい人には、うってつけのカメラでしょう。
電子ビューファインダー搭載
G1X mark3は、電子ビューファインダーを搭載。
直射日光下では液晶が見えにくくなりますが、そんな時でもファインダーがあれば大丈夫。
真夏の太陽下でも、被写体を確実に捉える事ができます。
決して大きいファインダーではありませんが、あるのとないのでは大違いです。
コンデジと言えども、ファインダーは欲しいよね。特に、真夏は必須と言っても過言ではない。
全部載せの安心感
G1X mark3は、何でもこなせる優等生タイプ。
全部載せの安心感が群を抜いています。
- 大型センサー搭載 → 高画質
- ズームレンズを搭載 → 画角の自由を手にいれる
- 広角側はF2.8の明るさを確保 → 暗所に有利
- 電子ビューファインダーを搭載 → 日中でも大丈夫
- バリアングル液晶を搭載 → 自撮り対応
- 防塵防滴 → 多少の雨でも安心
- 4ダイヤルによる快適な操作性 → ストレスフリー
これだけの機能を載せながらも、399g(バッテリーSD含む)に抑えてきた開発者に、拍手を送りたい。
G1X mark3 の気になるポイント(デメリット)
G1X mark3を使っていて、気になるポイント(デメリット)もありましたので紹介します。
- レンズバリアがない(レンズキャップ式)
- 大きなボケは期待できない
- シャッタースピード低速限界設定ができない
レンズバリアがない(レンズキャップ式)
G1X mark3一番のウィークポイント。
それは、レンズバリアがない事。
コンデジと言えば、片手で電源をON。
電源をOFFにすれば、レンズが自動的に収納。
しかし、G1X mark3はレンズバリアが非搭載。撮影するためにはレンズキャップを外す必要があります。
たった一手間ですが、意外と不便に感じました。
そんな時には、他社製の自動開閉レンズキャップの導入がオススメ。
見た目はイマイチですが、使い勝手が大幅に向上します。
多少厚みが増すものの、手軽に使える事を考えると、ありではないでしょうか。
私も導入しています。本当に快適なので、超オススメです。
大きなボケは期待できない
G1X mark3 のレンズの開放F値はF2.8-5.6。
標準的なミラーレス一眼カメラのキットレンズ(付属レンズ)と比較しても、特別明るくありません。
その為、ボケを活かした撮影は若干苦手。
ボケを期待して買うカメラではないので、その点には注意が必要です。
ボケについては分かっていて購入しましたが、「もう少しボケてくれたら」と思う事があります。
シャッタースピード低速限界設定ができない
基本的に全部入りのG1X mark3 ですが、唯一対応していない機能。
それが、ISOオート時のシャッタースピード低速限界設定です。
予め設定したシャッタースピードを下回らない様にISOを自動で調整する機能
→被写体がブレることなく、出来るだけ綺麗な画質で撮る事ができる
便利機能の一つなので、是非とも搭載して欲しかった。
子供を撮る私にとっては重要な機能。人によっては、評価が180°変わるのでフラッグシップと名乗るなら、搭載して欲しかった。
低速限界設定の機能はありませんが、代用となる機能は搭載しているよ!G1X mark3は、感度の上がり方の項目で「標準、早め、遅め」の3点から選択できます。
一緒に買うと便利なもの
G1X mark3 と、一緒に購入すると便利なものを紹介しておきます。
- SDカード
- 保護フィルム・ガラス
- 自動開閉レンズキャップ
- 保護フィルター
SDカード
G1X mark3のSDカードタイプは、UHS-I。
UHS-IIには対応していないので、UHS-Iタイプを購入しましょう。
(UHS-IIのSDカードも使えますが、UHS-I相当の速度での動作になります)
オススメのSDカードを紹介しておきます。
容量は、写真を撮るだけなら64GBで十分です。
参考|128GBではJPEGだけで9999枚以上、RAW+JPEGで約2450枚ほど記録できます。64GBなら半分ほどになります。
毎月のAmazonセールで安くなる事が多いため、セールの時に購入するとお得です。
Nextorage | Nextorage | SanDisk | |
---|---|---|---|
SDカードタイプ | UHS-I | UHS-I | UHS-I |
商品名 | NF1A128 | NF1A256 | SDSDXXU-064G-GHJIN |
速度 | 読込:100MB/s 書込:80MB/s | 読込:100MB/s 書込:80MB/s | 読込:200MB/s (カメラでは最大読込104MB/s) 書込:90MB/s |
容量 | 128GB | 256GB | 64GB |
価格 | 1,990円 | 3,280円 | 2,425円 |
NextorageのSDカードが最もおすすめですが、最近は在庫切れであることが多いのです。
そんな時は、SanDiskを選びましょう。
保護フィルム
液晶の保護に必要な、保護フィルム。
今回は、ハクバ製の保護フィルムを選択しました。
やはり、保護フィルムを貼っておくと安心ですよね。
自動開閉レンズキャップ
G1X mark3のデメリットを解消するための必須アイテム。
自動開閉レンズキャップを装着することで、使い勝手が大幅に向上します。
レンズキャップの付け外しが面倒だと感じたら、導入してみましょう。
保護フィルター
保護フィルターは、レンズへのキズを防ぐためのアイテム。
保護フィルターのメリット
- レンズへのキズ防止
- レンズの汚れ、ホコリ等の付着防止
- レンズがキズつかない レンズ修理費が掛からない
写りへの影響は、ほぼゼロ(逆光時は影響がある場合あり)。
『基本的に保護フィルターを付けておき、影響が出る時のみ外すという運用』がオススメです。
フィルターのサイズは、37mmのものを選びましょう。
キヤノン公式では、レンズフィルターの使用を推奨していません。使う場合は、自己責任になるので注意してください。
それでも私は、フィルターを使用しているよ!
まとめ
G1X mark3は、大型センサーとズームレンズを組み合せが光る、キヤノンのフラッグシップ(最上位)のコンデジです。
最後に、G1X mark3の特徴を簡単にまとめます。
- 大型センサー搭載による余裕のある画質
- 24-70mmの3倍ズームを搭載
- 広角24mmはF2.8の明るさを確保(参考:GRIIIは28mm F2.8のレンズ)
- 4ダイヤルによる快適な操作性
- 電子ビューファインダー、バリアングル液晶、タッチパネル搭載
- 防塵防滴(多少の雨なら大丈夫)
- レンズバリアがない(レンズキャップ式)
- 大きなボケは期待できない(レンズが明るくないため)
- シャッタースピード低速限界設定不可(代替機能はあり)
G1X mark3 は、優等生タイプのカメラ。
一点に優れる事はありませんが、全てに置いて平均以上。
撮れる写真も、安定して80点以上を出せる。そんなカメラです。
渾身の一枚を撮るというよりは、日常に寄り添うカメラとして、G1X mark3はいかがでしょうか。
G1X mark3は既にディスコン(販売終了)になっています。
購入する場合は、基本的に中古になりますので、出来るだけ状態の良いものを選びましょう。
コメント
コメント一覧 (4件)
突然のコメント失礼します。私も偶然思い立ってこの機種に関するブログを本日投稿したのですが、書き上げた後にこの記事を見つけ、既に書いていただいているのと殆ど同じことを書いてしまった!と驚いています。共感することが多く、「あるある」と思いながら読ませていただきました。ありがとうございます。
コメントありがとうございます。
G1X mark3いいカメラなのですが、中々人気が出ないカメラですよね。
使ってみて分かる良さがあるのですが、意外と玄人向けのカメラなのかもしれません。
ブログを拝見させていただきましたが、RAW現像で化ける点については本当に納得です。
ちょっと自分が持っているG1 X Mk3のことを調べていたら辿り着きました。
他の記事もいくつか拝見しましたが、文章が分かりやすくまとまっており、しかも作例もあって、とても参考になりました。
G1 X Mk3、いいカメラですよね。本格的にカメラをやっていない私にはこれだけで十分です。
記事のおかげでG1 X Mk3の良さを再確認することができました。
G1XシリーズはMk2までは1型を超える1.5型センサーだったり、本当に画質を追求している感じがして好きでした。
しかし、いつの間にかG1X Mk3もディスコンになっていて、毎年のようにアップデートしていたソニーのRX100も沈黙中、コンデジは高級機さえ風前の灯で、2010年代の高級コンデジの盛り上がりは、最後の輝きだったのかぁと思うと少し寂しですね。
コメントありがとうございます。
G1 X mark3を使っている方がいらっしゃって、嬉しい限りです。
キヤノンが非常に真面目に作ったコンデジなだけあり、基本性能は本当に高い。
ただ、レンズが明るくなく、ズーム倍率も低かったためか、世の中には受け入れられませんでした。画質や使い勝手はいいのですが。
G1 Xシリーズは、キヤノンの挑戦的なシリーズでしたよね。
本当によくご存知ですね。
コンデジは本当に新機種が出なくなり、寂しい限りです。
コンデジが復活して欲しいと願うばかりです。