クラシカルな外観をまとったニコンDf。
流線型デザインが主流の一眼レフ市場において、いまなお唯一無二の存在です。
ニコンは2013年にフルサイズ一眼レフDfを発売。
後に登場するミラーレスのZfcやZfへと続く“原点”となったモデルです。
私は今までに3度Dfを購入。
最初はシルバー、次にゴールド、最後にブラックを手に入れ、累計10年間愛用してきました。
Zf購入に伴い一度は手放したものの、Zfを使うことでDfの魅力を再認識。
買い直しを目論んでいます。
- フラッグシップD4と同じセンサーを搭載
- 光学ビューファインダーならではの撮影体験
- 官能的なシャッター音
- Fマウントオールドレンズがアダプターなしで使える
- バッテリー持ちがよい
- 動画が撮れないので、写真に集中できる
本記事では、ニコンDfを長年使ってきた視点から、「良かった点」と「気になる点」を交えつつ、作例とともにレビューしていきます。
作例
Dfで撮影した作例を紹介します。

桜が満開の川沿いを、ゆっくり歩きながら撮った一枚です。
春の空気感を、そのまま写しとめたかのような写り。
ニコンDfは、こうした日中の自然光でも階調のつながりがとても素直です。
桜の淡いピンクから幹の暗部、空の青まで、トーンの繋がりが絶妙で春の雰囲気にしっかりとマッチしています。
F8に絞っていても立体感を感じる描写。
フルサイズセンサーらしい懐の深さを感じます。

湖畔に立ち、風の音を感じながらシャッターを切った一枚です。
雲の白から空の淡い青、遠景の森の緑までがなだらかにつながり、無理にコントラストを立てなくても自然な階調が得られます。
左下にかかる橋の手すりも、一本一本がわかるほど丁寧な描写。
有効画素数1625万画素と控えめですが、低画素とは思えないほど優れたセンサー性能に感じます。

森の中に咲く彼岸花の群生を撮影した一枚です。
木々に囲まれた場所で、画面全体にシャドーが多いシチュエーション。
こうした条件でも、暗部の階調がしっかりと残るのが印象的です。
深みのある赤の表現。いいですよね。
派手になりすぎず、ちょうど良い塩梅に落とし込める描写力。
本当に大したものです。

川辺の崖にぶら下がる氷柱を捉えた一枚です。
使用したのは、キットレンズのAF-S NIKKOR 50mm f/1.8 G。
安価なレンズながら、周辺までキレのある写りを見せてくれます。
雪の反射でハイライトが飛びやすい条件ですが、白とびはしっかり抑えられている印象。
Dfは明暗差が大きい場面でも、気兼ねなく使っていけます。

暗いシチュエーションの多い水族館。
写真はISO3200の高感度ですが、ノイズ感を全く感じさせない写り。
これが高感度に強いD4センサーの実力なのでしょう。

塀の上でくつろぐ三毛猫を写した一枚です。
猫のふわふわとした毛の質感が、とても自然に再現されています。
一本一本が浮き立つようで、触れたときの感触まで伝わってきそうな描写力。
ただ柔らかいだけでなく、ピント面はキッチリと描かれているのも好印象です。

気持ちよさそうに眠るキツネを写した一枚です。
柵越しの撮影でしたが、フルサイズセンサーならではのボケを活かし、柵を大きくぼかして写り込みを抑えることができました。
やはり、Dfの毛並みの質感表現には目を見張るものがあります。
実は、こうした柔らかな毛並みの表現は意外と難しいもの。
シャープすぎず、柔らかすぎない。
いい塩梅にまとめてくれるのも、Dfならではの魅力です。

高原の牧場で、ゆったりと過ごす羊の群れを写した一枚。
半逆光のシチュエーションということもあり、立体感を感じる描写です。
Dfはホワイトバランスが黄色に転びすぎないので、こういった場面でも安心して撮影できます。

高原を高台から写した一枚。
木々の一本一本を誤魔化すことなく、見事に表現されています。
実はこの写真、全体の約1/3ほどをトリミングしたもの。
それでも写真として成立しているのは、元の描写がしっかりしているからでしょう。
有効画素数は1625万画素と控えめですが、この程度のトリミングならば十分に使える印象です。

Dfは食べ物の描写も優秀です。
バランスの良い階調表現が、実物以上に和菓子の魅力を引き立ててくれます。
使用したレンズは、フィルム時代に設計された銘玉、AI AF Nikkor 85mm f/1.4D IF。
見た目だけでなく、描写の面でもDfにピッタリのレンズです。

明暗差が大きく、カメラ泣かせなシチュエーションです。
ボディ塗装の滑らかな質感がとてもエレガント。
ハイライトだけでなくシャードー部の階調表現にも素晴らしいものがあります。
特に印象的なのが、リアバンパーの黒の表現。
シャドー部のトーンがキッチリと再現され、自然な立体感が伝わってきます。
当時のフラッグシップに搭載されたセンサーだけのことはあり、描写面では文句のつけようがありません。
スペック
ニコンDfのスペックを簡単に紹介します。
クラシカルなデザインを持つ同社のカメラ、Zfと比較しています。
| Df | Zf | |
|---|---|---|
| カメラの種類 | 一眼レフ | ミラーレス |
| マウント | Fマウント | Zマウント |
| センサーサイズ | フルサイズ | フルサイズ |
| 画素数 | 1625万画素 | 2450万画素 |
| ファインダー | 光学ビューファインダー 0.7倍 | 電子ビューファインダー 369万ドット 0.8倍 1000cd/m2 |
| 内蔵フラッシュ | なし | なし |
| ボディ内手ぶれ補正 | 5軸 8段 | |
| 被写体検出 | 9 種類 | |
| 自撮り | バリアングル | |
| タッチパネル | あり | あり |
| 動画 | 4K60p対応 | |
| スマホ連携 | あり | |
| USB充電 | USB-C | |
| 低速限界設定 | あり | あり |
| 記録メディア | SDカード(UHS-I) シングルスロット | SD(UHS-II) micro SD(UHS-I) ダブルスロット |
| ボディ質量 (バッテリーSD含む) | 765g | 710g |
| サイズ | 約144×110×67mm | 約144×103×49mm |
| カラー | ブラック シルバー | ブラック シルバー |
| 発売年 | 2013年 | 2023年 |
| ボディ価格 | (中古)約14〜17万円 | (新品)約26.9万円 |
基本性能は、最新モデルのニコンZfが優秀。
スペック上ではDfに勝ち目はありません。
差別化のポイントとしては、Dfはフイルム時代から使われているFマウント採用していること。光学ビューファインダーを採用していること。
この2点に魅力を感じるかが、勝負の分かれ目になりそうです。

よかった点

Dfでよかった点(メリット)は、以下の7点です。
①フラッグシップD4と同じ高性能センサーを採用

ニコンDfは、当時のフラッグシップ機D4と同じ高性能センサーを採用しています。
有効画素数は1625万画素と控えめですが、ダイナミックレンジや高感度性能は今でもトップクラス。
数字以上に“写りの良さ”を実感できるセンサーです。
当時話題になった「ニコンの写真は黄色い」という指摘も、Dfではほとんど気にならないレベルに抑えられています。

低画素ゆえに画素ピッチに余裕があり、斜めから入射する光も無理なく受け止めることが可能。
入射角が厳しくなりがちなオールドレンズでも、しっかりと光を捉えてくれます。
まさにDfのコンセプトにマッチしたセンサー選択と言えます。
フラッグシップのセンサー性能を活かしたオールドレンズとのマッチング。
この組み合わせこそが、Dfというカメラの唯一無二のコンセプトです。
②クラシカルなデザイン

ニコンDfは、フイルムカメラを彷彿とさせるクラシカルな外観を備えています。
直線を基調とした、昔ながらのカメラデザイン。
デジタル一眼レフカメラとして初めて、斜体ではない「NIKON」ロゴを採用するという徹底ぶりです。
軍艦部には、シャッタースピード、ISO感度、露出補正をダイレクトに操作できる専用ダイヤルを配置。
アルミ製の金属ダイヤルと、マグネシウム合金ボディの組み合わせにより、非常に質感の高い仕上がりになっています。
フイルムライクなデザインの採用により、オールドレンズを装着したルックスも良好。
サイズ自体は決して小さくないDfですが、不思議と被写体への威圧感は少なめです。
このあたりも、フイルムカメラを思わせるデザインの効果なのでしょう。
③光学ビューファインダーによる撮影体験
Dfはペンタプリズム式の光学ビューファインダー(以降、光学ファインダー)を搭載。
ミラーレスカメラの電子ビューファインダーとは異なり、フォーカシングスクリーンに写った被写体を直接見ることができます。
電子ビューファインダーは近年大きく進化しましたが、リアリティという点では、やはり光学ファインダーには及びません。
光学ファインダーは、露出(明るさ)がリアルタイムで反映されないなど、不便な点もあります。
しかし、その不便さこそが撮影体験の楽しさにつながっているのです。
不確定な要素がワクワク感を生み、撮れた写真を見て一喜一憂する。
クラシカルなDfのデザインと相まって、それは他には代えがたい、特別な撮影体験へとなるのです。
④官能的なシャッター音
Dfのシャッター音は、まさに最高と言える仕上がりです。
シャッターを押した瞬間、指先から伝わる確かな振動と、耳に心地よく響く官能的な音。
そこには「写真を撮った」と実感できる、上質な撮影体験があります。
私は130以上のカメラを購入し実際に使用してきましたが、その中で最も大好きなシャッター音です。
もちろん、シャッター音で写真の写りが変わるわけではありません。
しかし、撮影者の気分は確実に変わります。
気分が高まればシャッターを切る回数が増える。
シャッター回数が増えれば、結果として良い写真に出会う確率も高くなるのです。
Dfのシャッター音は、撮影者を自然とその流れへ導いてくれます。
人生で一度は体験してほしい。
そう思わせてくれる、特別なシャッター音です。
⑤すべてのFマウントレンズが使える(オールドレンズにも対応)
ニコンDfはオールドレンズも含め、すべてのFマウントレンズが制限なく使えます。
Fマウントのオールドレンズは、様々な種類がありそのすべてが使えるのは大きなメリット。
Df以外のFマウント一眼レフでもオールドレンズは使用できますが、測光が効かずMモード限定になるなど、何かしらの制限が付くことも少なくありません。
その点Dfは、オールドレンズ使用を前提に設計されたカメラ。
「このレンズは対応しているのか?」と事前に調べる必要がなく、安心して購入できるのも嬉しいポイントです。
さらに、ミラーレスカメラのようにアダプターを介す必要もありません。
Fマウントレンズを、そのままボディに装着できる。このシンプルさも大きな魅力です。
オールドレンズの使用を想定して開発されたカメラだけのことはあり、古いFマウントレンズとの相性は抜群です。
⑥バッテリー持ちがよい
ニコンDfは、電池1本で約1,400枚の撮影が可能。
非常にバッテリー持ちが良いのです。
最新モデルのZfは約410枚ですから、Dfのバッテリーライフは驚異的と言えます。
日帰り撮影はもちろん、1泊程度の旅行であれば予備バッテリーは不要。
電池切れの心配なく撮影に集中できる安心感は、想像以上に大きなメリットです。
とはいえ、DfはUSB充電には対応していません。
心配な方は予備バッテリーを1本用意しておくと安心でしょう。
ゆゆねこ10年間Dfを使ってきましたが、予備バッテリーを使ったのは数日間に及ぶ旅行のときだけでした。
⑦フルサイズ一眼レフとしては軽量
ニコンDfの質量は765g(バッテリー・SDカード含む)。
フルサイズ一眼レフとしては、非常に軽量なボディです。
実は、ニコンのフルサイズ一眼レフの中で、Dfが最軽量のモデル。
ミラーレスのニコンZfと比べても、その差はわずか55gしかありません。
一眼レフは「大きくて重い」イメージを持たれがちですが、Dfは例外的な存在。
やはり、軽さは大きなメリットです。
カメラの軽さが写りに直接影響することはありません。
しかし、持ち出す頻度には確実に影響します。
どれだけ写りの良いカメラでも、大きく重ければ次第に使わなくなる。
これは、私自身が何度も経験してきたことです。
写真撮影に十分な性能があるのなら、カメラは軽いに越したことはありません。
「軽さは正義」という言葉がありますが、それは一眼レフでも同じ。
Dfの軽量ボディは、カメラを持ち出す機会を確実に増やしてくれます。
気になる点


満足度の高いDfですが、気になる点もありました。
気になる点は以下の3点です。
①瞳AFや被写体認識などの便利機能はない
ニコンDfは2013年発売の一眼レフカメラ。
光学ビューファインダーを覗いて撮影するスタイルですので、瞳AFや被写体認識といった最新の便利機能は搭載されていません。
とはいえ、便利機能がないからといって撮影に困るかというと、そんなことはありません。
オートフォーカスそのものは快適で、スッと迷いなくピントが合います。
昔ながらの一眼レフの撮影スタイルに慣れている方であれば、違和感なく、すんなり撮影に入れるはずです。
むしろDfは、カメラが先回りしてくれるのではなく、撮影者が主導で撮るカメラ。
そのシンプルさを楽しめるかどうかが、Dfとの相性を分けるポイントだと感じます。
②動画撮影ができない
ニコンDfは、動画撮影に対応していません。
動画撮影が当たり前となった現在では、かなり硬派な仕様と言えるでしょう。
しかし、動画が撮れないということは、裏を返せば写真に集中できるということ。
私はこの割り切りを、むしろ好ましく感じました。
Dfは最初から最後まで“写真機”。
写真だけに向き合いたい人にとって、これ以上ないほどピッタリのカメラです。
③ライブビューでのオートフォーカスが遅い
ニコンDfは動画撮影には対応していませんが、ライブビュー撮影自体は可能です。
ただし、ライブビュー時のオートフォーカス速度は正直かなり遅め。
気軽にライブビュー撮影ができるレベルではありません。
体感ではピントが合うまでに1〜2秒ほど待たされる印象。
三脚に据えて風景を撮る、といった静的なシーンであれば問題ありませんが、基本的には光学ビューファインダーを覗いて撮影するスタイルがベターです。
Dfはあくまで「ファインダーで撮るカメラ」。
ライブビューは補助的な機能と割り切って使うのが、このカメラと上手く付き合うコツだと感じます。
一緒に買うと安心なアイテム
カメラだけ購入しても、写真を撮ることはできません。
一緒に買うと安心なアイテムも同時にチェックしておきましょう。
①SDカード|必須


DfはUHS-IタイプのSDカードに対応。
UHS-IIには非対応ですので、コストパフォーマンスに優れるUHS-Iタイプを購入しましょう。
オススメのメーカーは、SanDiskとNextorage。
SanDiskは昔からある老店。Nextorageはソニーのメモリーストレージの事業を継承した会社です。
どちらも信頼性の高いメーカーですので、この2社から選んでおけば間違いありません。
②液晶保護フィルム|ほぼ必須
液晶の保護に必要な、保護フィルム。
Dfはカメラを首から下げて歩く事が多いため、液晶保護フィルムは必須と言っても過言ではありません。
③保護フィルター|安心なアイテム
保護フィルターは、レンズへのキズを防ぐためのアイテム。
保護フィルターのメリット
- レンズへのキズ防止
- レンズの汚れ、ホコリ等の付着防止
- レンズがキズつかない レンズ修理費が掛からない
写りへの影響は、ほぼゼロ(逆光時は影響がある場合あり)。
『基本的に保護フィルターを付けておき、影響が出る時のみ外すという運用』がオススメです。
フィルターのサイズは、レンズに合うものを選びます。
例:レンズに『φ46』と表示があれば、46mmのフィルターを選べばOK
私は、ハクバの『XC-PRO エクストリーム レンズガード』を主に使用しています。
④ブロア|安心なアイテム
ブロアは、レンズに付着したゴミ(埃等)を吹き飛ばすのに便利なクリーニングアイテム。
空気の力でゴミを吹き飛ばします。
レンズのゴミは、写りに影響しますので、ブロアを1つ持っておくことをオススメします。
⑤予備バッテリー|安心なアイテム
Dfは、予備バッテリーが不要と言えるほどのバッテリーライフを実現しています。
とはいえ、USB充電には対応していないため、電池切れになると無力。
モバイルバッテリーで気軽に充電とはいかないので、予備バッテリーがあると安心です。
まとめ


クラシカルな外観をまとった、Fマウント唯一の一眼レフカメラ、ニコンDf。
2013年発売と登場から10年以上が経過していますが、その画質は2025年現在でも十分に通用します。
何より魅力的なのは、クラシカルな外観と光学ビューファインダーによる撮影体験。
オールドレンズとの相性の良さも含め、最新機種にはない魅力が数多く詰まっています。
ニコンDfは、ミラーレスのZfcやZfとはひと味違う存在。
「写真を撮る」という行為そのものを、じっくり楽しみたい人にこそ手に取ってほしい一台です。













